第1次世界大戦における戦争の悲惨さから、欧州五か国でのロカルノ条約(1925年)を経て、不戦条約(ブリアン・ケロッグ条約;1928年)が締結され、戦争は違法化されるようになりました。この条約は人類史上、戦争の禁止を法制化した画期的なものであったのですが、この条約をもってしても戦争を止めることはできませんでした。第2次世界大戦後、これらの流れを受けて国連憲章(1945年)が制定されました。自衛権の行使(憲章第五十一条)及び軍事制裁(憲章第四十二条)の例外を除き、武力の行使による威嚇が禁止されたのです(憲章第二条)。戦争の違法化以降は、自衛権の行使は例外として扱われるようになりました。
一般的に国家に対する急迫不正の侵害があった場合に、その国家が実力をもってこれを防衛する権利、これを自衛権といいます。日本国憲法は、いわゆる戦争を放棄し、また戦力はこれを保持しないというふうに規定しているのですが、これにより我が国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されていないというふうに考えるのが当然です。その理由については、憲法前文がいわゆる平和的生存権を有することを確認しているということを踏まえると、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得ることは国家固有の権能の行使として当然であり、憲法第九条がこれを禁止しているとは到底考えられないからです。
ただし例外としての自衛権行使ですから、国連憲章第五十一条において、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く機能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。」としています。つまり簡単に言うと、国連がならず者に対する措置をとるまでの間、自衛権の行使は特例的に認められているのです。
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