御前様は技術革新にもたいへんに関心をお持ちで、専門知識外の視点(ご本人はお経からと言われていたが)から超伝導や遺伝子組み換え、地球温暖化問題についてお話をされていた。ある日突然「超伝導には銀が使えるのではないか」と尋ねられ、面食らった。私は京都大学工学部で留年した時、超伝導を少々かじっていたのだが、「なんでそう思われるのですか」と聞くと、「お経には、七宝といって、金・銀・瑠璃(るり)・シャコ・瑪瑙(めのう)・珊瑚(さんご)・琥珀(こはく)・明月真珠(みょうがつしんじゅ)と書いてある。銀にはもっと大きな役割があるに違いない」と言われる。実際、銀の酸化物は超伝導特性を持っているし、超伝導材料を加工する際に、銀は大きな役割を果たす。現在では超伝導材料を線材化する時に、銀は無くてはならない材料である。線材化すればコイルにもなるし用途はたいへんに広がる。常温超伝導技術が進んでゆけば、蓄電(電気を効率よくためること)も可能となるし、電気抵抗の少ない線材を利用することにより、送電ロスをなくすことができるので、発電所の数を減らすことも可能となる、キーテクノロジーである。
地球温暖化についても、「地球に膜ができとるような気がする」と言われていたが、「砂漠を開墾しろ」「中国のハゲ山に木を植えろ」「そうすれば涼しくなる」と具体的な植樹の方法も述べておられた。比叡山の中で50年以上暮らしていた実践からかもしれないが、「物事の本質を大きく考える」ことから、いろいろなアイデアを出すことができるのだと、感じ入った。
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