御前様(叡南覚照大阿闍梨)からは、いろいろな座学を教わった。政治の話では、御前様は田中角栄元首相をたいへんに評価されていた。田中元首相とは個人的にも親交があったそうである。
田中角栄元首相は、毀誉褒貶の激しい政治家である。コンピューター付きブルドーザーとも評された行動力と緻密さ、なによりも気配り抜群の人であったそうだが、一方で「政治とカネ」の権化であるかのように言われている。田中元首相は陽性な政治家であり、何よりも経済的な復興を心がけ、政策は常に具体的。日本の高度経済成長を支えた政治家である。加えて日中関係、日露関係にもきわめて大きな足跡を残しているという点で、日本の政治史に残る政治家であることは間違いない。いわゆる「ロッキード事件」についても、いつか真実が明らかにされる時が来る、というのが御前様の考えだった。さて田中元首相のこの「陽性」な部分が御前様にぴったりマッチしたのだと思う。「常に笑顔を忘れるな」とは、御前様が常々仰っていたことだが、同様に「政治とは夢を語ることだ」と言われていた。御前様の話は、突拍子もないものも少なくなかったが、それでもいつもとても楽しかった。
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