漬物のタクアンも、初めて考案したのは比叡山延暦寺の元三(がんざん)大師良源である。
元三大師は正式には慈恵大師であるが、命日が正月三日であることから元三大師といわれている。元三大師は第18代天台座主、今の延暦寺の伽藍の基礎を整えた僧であり、比叡山中興の祖。応和3年宮中清涼殿で行われた法相宗の法蔵との宗論で、元三大師良源は「一切衆生悉皆成仏(だれでも仏になれる)」と天台宗の立場を主張し論破した。浄土教の祖である。
霊験もあらたかで、疫病が流行ったときに、鏡の前で座禅、自らの姿を鬼に変え、それを弟子に写させたものをお札としたという。西洋の悪魔のような絵のお札がそれで、「角大師」「豆大師」「厄除け大師」の名でも知られる(栃木県の佐野厄除け大師は、元三大師をおまつりするお寺)。この元三大師が糠に大根を漬け込んだものを考案したのが漬物の始まりで、「定心房」という。また現在のスタイルの「おみくじ」をはじめて考案したのも元三大師であるといわれている。
比叡山延暦寺では、「大師は弘法にとられ漬物は沢庵にとられる」という。居候時代に聞いたお話。
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