赤山禅院をはじめとする比叡山延暦寺のほとんどの塔頭は、葬式寺ではない。拝観料を取らないところがほとんどで、お寺の収入はお札やお守りの代金、加持祈祷料に信者さんからの献金である。お手伝いのつもりで始めたもみじ祭りだったが、ここでも多くのことを叡南覚照大阿闍梨(御前様)から学ぶことができた。
早朝から露店の茶店の準備をするわけだが、御前様が赤山禅院の境内を散歩がてらお廻りになる。きれいに磨いておいた灰皿を目に留め、「一本、二本、吸殻を残しておけ。喫茶店じゃないんだからきれいにしておけば足が止まるわけじゃない。居やすい雰囲気を出せ」。事実、使用感がある方が、参拝者の足が止まった。不思議なものである。また常に焚き火を絶やさないようにしろ、とも言われた。焚き火にはイチョウの葉っぱを使えとのことである。11月の赤山禅院は少々肌寒く感じる日が多くなるわけだが、イチョウの葉っぱで焚き火をすると、落ち葉であっても、水分が多いため煙が大量に出る。まるで「のろし」である。「火と煙」に人が集まると御前様はおっしゃっていたが、事実そのとおりであった。
御前様は常々、「暖かいところに人が集い、人の集うところに笑顔が生まれる」と言っておられた。また「人間の値打ちとは、その人が手を上げたときに何人の人間が集まるかだ」とも言っておられた。そのことを実践で学ばせていただいたと今も感謝している。特に「人間は笑顔が大切で、いつも笑顔でいるように」と言われたことは私の一生の財産だ。
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