本日、小沢一郎氏が民主党常任幹事会の処分に対して異議を申し立てました。以下全文です。
「常任幹事会・倫理委員会の皆さんへ 私の主張」
(不服申立書)
平成二十三年三月一日
衆議院議員 小沢一郎
去る平成二十三年二月二十二日付け「党員資格停止にかかる通知」を受領いたしました。党常任幹事会におかれては、私に対し「検察審査会の政治資金規正法違反被疑事件についての起訴議決にもとづき、起訴されたことについて、本日(二十二日)より当該事件の判決が確定するまでの間の「党員資格の停止処分」とすることを決定した」とのことでありますが、
第一に、起訴されたという事実のみを処分の対象としていること、
第二に、公訴事実の認定については、判断材料としていないこと、
第三に、私の元秘書三名が逮捕・起訴されていることを処分事由として考慮していること、
第四に、政治倫理審査会が開催されていないことをもって、処分事由として考慮していること、
第五に、処分の内容が「党員資格停止期間中の指針」に定められた原則六ヶ月を逸脱して判決確定までの間となっていること、
の五項目の処分の事由および処分の内容すべてについては、常任幹事会に先立って行われた倫理委員会において、「倫理委員会の皆様へ 私の主張」として、私自身の考え方を申し述べ、それに対して倫理委員会の皆様のご意見を書面にてご回答いただくようお願い申し上げたところであるにもかかわらず、未だにご回答をいただいておりません。誠に残念であります。
さらに当日の倫理委員会において、委員の中から、「倫理委員会は、処分の是非や、処分内容の軽重を判断するものであって、処分の対象となる行為に対しての判断は行わない」との発言がありました。処分の対象となる行為に対しての判断なしに、処分内容を判断することなど、本来あってはならないことであり、この度の処分の一連の手続き、我が党のあり方について、このようなことでよいのだろうかと思わざるを得ません。
ここに常任幹事会により決定された処分の事由ならびに処分の内容すべてに不服を申し立てるとともに、あらためて常任幹事会・倫理委員会の皆様のご意見を伺います。常任幹事会・倫理委員会におかれましては、以下について書面によりご回答下さいますようお願い申し上げます。
また、処分を決定した常任幹事会においては、採決も行われなかったと聞いておりますが、ことは議員の身分・政治活動に関わることであり、どなたが処分に賛成で、どなたが反対であるのか、明らかにしていただきたい。公党として当然のことである思います。よろしくお願い申し上げます。
一. 検察審査会の起訴と、通常の検察による起訴との違いについて
役員会・常任幹事会は、私が、収支報告書の虚偽記載につき共謀したという容疑が真実であるか否かにかかわらず、単に起訴されたという事実をもって処分の根拠としていますが、今回の検察審査会による起訴を通常の起訴と同視することはできないと考えます。
一連の問題に関し、一年余にわたる東京地検特捜部の徹底した捜査により、多数の書類を押収され、秘書・元秘書は身柄を拘束された上で取り調べを受け、私自身も四回にわたって事情聴取に応じてきました。結果、私については不起訴処分、さらに、一回目の検察審査会の起訴相当議決後の再捜査でも再び不起訴処分となりました。検察審査会の議決にある通り、検察審査会制度は「国民の責任において、公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度である」とのことです。検察審査会の議決による起訴は、検察の起訴のように有罪の確信があって行うのではなく、法廷で「白黒」をつけるために行う、つまり迷ったから裁判の手続きに乗せようと、当の検察審査会自身が述べているわけです。
また今回、検察官役を担われる指定弁護士も、記者会見において「有罪だと確信したから起訴したのではない。議決があったから起訴した」「私たちの職務は必ずしも有罪だと確信したから起訴するのではなく、法令上、起訴しない条件がなかったから起訴した」と述べたと聞いており、今回の起訴の性格を指定弁護士自身の発言が物語っております。
この点について、常任幹事会・倫理委員会の皆様は、検察審査会による起訴手続きと、検察による通常の起訴の違いについて、どのようにお考えになっているのか、お伺いします。
二.検察審査会の起訴議決が有効であるか否かについて
役員会・常任幹事会は、今回の検察審査会の起訴議決に基づく起訴が有効であることを前提に処分の判断を行っていますが、そもそも検察審査会の起訴議決自体に手続違反があります。
東京第五検察審査会の二度目の議決には、不起訴になった事実以外も議決の対象となっております。つまり一回目の議決と二回目の議決の内容が異なっているのです。被擬事実でもないことについて審査の対象となるのであれば、いかなる無辜の民であっても審査の対象となり、いわれなき容疑によって強制的に起訴されることとなりかねません。公人中の公人であり公選による衆議院議員にとっては尚更であり、到底認められません。
私は、検察審査会の議決の有効性についても行政訴訟により争ってまいりました。この点につき、最高裁は、「刑事裁判の中で主張しうる」との判断を示しており、今後の刑事裁判の中で起訴議決の有効性自体についても争ってゆくこととなります。
さらに、起訴議決に至った最大の証拠である石川議員の供述調書についても、再捜査の取調べの際に担当検事の誘導等があったことを示す録音が存在しており、この供述調書の任意性、信用性が否定されれば公訴取消しも十分にあり得ます。
また検察審査会自体、議事録も公開されておらず、第一回目の議決の際と第二回目の議決の際の構成委員の平均年齢が、本来入れ替わっているはずであるにもかかわらず三十四・五五歳と同じであって、そもそも一千万都民の中から無作為抽出によって委員を選任した場合に、平均年齢が三十四・五五歳となる確率はほとんどゼロであることに加え、二度の審査委員会委員の平均年齢が同じとなることなど、偶然にしてもあり得るはずもないこと、審査補助員の弁護士に支払われた旅費の日付が、報道による審査補助員就任時期以前のものまで含まれており、ルールに則った審査が行われたかどうか疑わしいこと、議決前には担当検事による不起訴理由の説明が必要ですが、ほんとうに担当検事が議決前に検察審査会に出席したかどうか定かではないことなど、その経過も内容もまったく公開されておらず、全て秘密のベールにつつまれております。一千万都民のなかから無作為で選ばれたとされる十一人の検察審査会委員の素性はもちろん、審査の過程も明らかにされていないのであります。果たして検察審査会による議決が、「国民の責任」といえるだけの正当性を有しているのか、はなはだ疑問であります。
常任幹事会・倫理委員会の皆様は、検察審査会の起訴議決の有効性について、どのように判断されているのか、お伺いします。
三.元秘書3名が逮捕・起訴されたことについて
役員会・常任幹事会は、元秘書三名が逮捕・起訴されたことを処分の理由としていますが、これまでは秘書がその容疑を認めた場合がほとんどであり、しかも秘書の逮捕・起訴を処分の理由にした例はないと記憶しております。
他方、私の元秘書三名は、一貫して無罪を主張して参りました。無罪を主張しているからこそ、他の秘書の件とは異なり、強制捜査の対象となり、現在は公判廷において無罪を争っているのであります。この中で先にも申し述べた通り、取調べの際に担当検事の誘導等があったことを示す録音が証拠として採用され、証拠をねつ造したとされる検事による調書の証拠採用が見送られるなど、裁判の今後の成り行きが注目される中、自らの罪を認めた秘書の事例と同列に私の問題を論ずることには違和感を憶えざるを得ません。
この点についての常任幹事会・倫理委員会の皆さんのご所見をお伺いいたします。
四.衆議院政治倫理審査会への出席について
私は、昨年十二月末に政治倫理審査会への出席を言明いたしました。
私の弁護団は、刑事裁判中に政倫審に出席して自己に不利益な供述を求められることは、場合によっては裁判において不利益を被りかねず、憲法の人権保障の趣旨に反するとの意見でしたが、私は、国民生活に不可欠な予算の成立に必要であれば、党のために政治倫理審査会に出席すると申し上げたところであります。出席を拒否してはおりません。
政治倫理審査会が未だに開催されていないのは、国会運営上の都合によるものと思います。
常任幹事会・倫理委員会の皆さんのご所見をうかがいます。
五.党員資格停止の不利益遡及について
私はもとより処分を受けるいわれはありませんが、今回の党員資格停止処分の期間について、「党員資格停止期間中の権利制限等の指針」によれば、最長六ヶ月とされているものを、一般職公務員の起訴休職を類推して「判決確定までの間」とされている点についても、前例はなく理解に苦しむところであります。党において規約や指針があるにもかかわらず、定められた以上に不利益を適用することは、法治国家のあり方からしても、また民主主義の国の政党のあり方としても、著しく不穏当であります。これでは規則や指針を定めている意味がありません。
加えて、そもそも「党員資格停止期間中の権利制限等の指針」においてあらかじめ最長六ヶ月と定めたことについては、根拠・理由があるはずであります。「裁判手続きに要する期間を予見することはできないため」今回処分の期間を延長するとのことですが、六ヶ月以上の長期の党員資格停止となると、党員としての実態を失い、党員資格が復活する場合においても、党員としての活動が継続できなくなるのではないかとの危惧を抱きます。党員資格停止期間が最長六ヶ月と定められた根拠と、今回不利益を遡及してまで逸脱する理由について、常任幹事会・倫理委員会の皆さんはどのようにお考えか、お聞かせください。
以上申し述べて参りました通り、私に対して発議されている今回の処分はいずれも前例がなく、なぜ私だけがこのような処分を受けるのか、合理的な理由は見当たりません。
常任幹事会・倫理委員会におかれましては、ただ今申し上げました私の主張について、書面によりご回答下さいますようお願い申し上げます。
今後私は、全国民に開かれた法廷の場において、これまで通り真実を述べて参ります。
そして、何よりも、従来から様々な機会で申し上げてきたとおり、何一つ私自身やましいことはありません。これからの裁判において、私が無実であることは自ずと明らかになります。
私は、この二十年間、一貫して政権交代の必要性を主張してまいりました。そして国民の皆様のお力で、ついに民主党政権が誕生しました。しかしながら、「国民の生活が第一。」の政治は未だ実現しておらず、何千万もの国民の皆様とのお約束を中途半端にすることはできません。
今後は、弘中惇一郎弁護士を始めとする弁護団とともに、一刻も早く無罪判決を獲得して参ります。そして、引き続き民主党の国会議員として、「国民の生活が第一。」の政治を実現すべく、私の座右の銘である「百術は一誠に如かず」の言葉の通り、誠心誠意取り組んで行く決意であります。
何卒常任幹事会・倫理委員会の皆様のご理解を賜りますようお願い申し上げます。
以上
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