小選挙区制度は、従来の派閥構造を基礎とする自民党政治にいろいろな影響を与えるようになる。一つの政党から選挙区に立候補するのは一人だけ。候補者個人の資質もさることながら、政党の政策やイメージが選挙戦の大きな要素となる。また派閥に依存していた資金においても、小選挙区制度と同時に導入された政党助成制度によって、政党が主な役割を担うこととなった。派閥の領袖の力が相対的に低下すると同時に、政党の執行部がその役割を拡大させることになったのである。
かつて平成4年から5年にかけて政治改革論議はなやかなりし頃、自民党の会合で小選挙区制度導入に強硬に反対していた議員がいた。小泉純一郎氏その人である。駆け出しの秘書であった私は、その会議を傍聴していて、ペンを片手に、そのペンで執行部を指しながら厳しく小選挙区制度導入反対を主張していた小泉氏を今でも思い出す。反対の趣旨は「執行部の権限が強くなりすぎる」と言うことであったと思う。ドスをきかせながら「強行するとたいへんなことになる」と述べていたように思う。
その小泉氏が小選挙区制度のもつ特徴を最大限に生かし、自民党に圧勝をもたらしたのは、やはり小泉氏が小選挙区という制度を熟知していたからだろう。
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