千日回峰行者が焚く護摩には様々な霊験があると思われている。それを求めて各地から信者さんが阿闍梨様のところを訪れるのだが、中には他人を呪って欲しいと来る人もいるという。
隆慶一郎さんという小説家がおられた。「影武者徳川家康」などの歴史娯楽小説で有名である。隆さんがある日、叡南覚照師(御前様)を訪れたことがある。取材という意味もあったのだろう。その際に隆さんの『風の呪殺陣』という小説について御前様にお話をされたのだそうだ。あらすじは、戦国時代、織田信長の焼討ちを生き延びた比叡山の修行僧が、織田信長を呪い殺そうとする話。そのストーリーを隆さんが御前様に話すと、御前様は、「先生、仏教は人を殺さんのじゃ」。(隆慶一郎さんの小説はどれもとても面白く、御前様も隆先生、隆先生と呼んで親しんでおられた。隆慶一郎さんはその後まもなく他界される)
比叡山延暦寺は殺生厳禁。赤山禅院内では蚊が血を吸いにとまっても、絶対に叩かない。静かに払いのけるだけである。
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